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    そこに僕らは居合わせた

    2013.01.20 Sunday 13:55
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      『そこに僕らは居合わせた』

        語り伝える、ナチス・ドイツ下の記憶 

      グードルン・パウゼヴァング 作
      高田ゆみ
      子 訳 みすず書房

                      201207
      そこに僕らは居合わせた―― 語り伝える、ナチス・ドイツ下の記憶

      「全体主義の狂気」

       テレビで、政治に関するニュースを見ていて、ひどく不安になることがある。その場で語られていることの是非ではなく、どの局も、まるで言い合わせたように、政治的案件に対して否定しかしないからである。勿論、否定し糾弾すべきこともあるが、問題点も代替案も棚上げし、論議もなく、正義面して、NOを突きつけることだけに意義を感じているような報道姿勢は、極めて陳腐だ。過去、日本のマスメディアは、プロパガンダに利用された恥ずべき事実がある。戦後、自由な言葉をパブリックに発信できる喜びを獲得してきたはずだ。しかし、自由と反抗が、形骸化する中で、権力にNOと言うことが、報道の役割になってしまったのではないか。極論すれば、思考停止、画一的報道は、戦中のプロパガンダと全く同じなのではないだろうか。

       この本は、ナチス支配の時代の普通の人々の日常、戦場ではない場所での、戦争の破壊行動。その場に生きた人々のその後、今に続く、人生の暗い影を描いた短編集である。

       物語の多くは、当時子どもだった筆者が見聞きし、体験した実話だと、あとがきにもあるが、ノンフィクション的な匂いは廃され、物語として書ききっている筆力に、かえって、筆者の決意と責任を感じる。

       時代も切り込み方も違うので、読む人によって心に残る作品は違うだろう。私は、「おとぎ話の時間」という一編が胸を離れない。

       主人公は、十歳の少女「私」。大好きな優しい先生に、土曜日の最後の時間、お話や本を読んでもらうことを楽しみにしている。

      それは、ドイツ政府の秘密司令のもと、ユダヤ人教会やユダヤ人商店街の多くが破壊、略奪された夜の二ヶ月ほど前のことだった。

      おとぎ話の時間、先生は、歯医者に行った女の子の話をする。診察室から出てきたのは、鈎鼻に黒い巻き毛、肉厚の下唇、大きく出っ張った耳の太った医師。ユダヤ人の特徴だと、学校などで何度も教えらえた容姿の男である。歯医者は、女の子が待合室で仲良くなった、金色の巻き毛の少女を診察室に連れて行く。

      「先生、やめてください。お願いです。先生!」

      大きく哀れな声がして、扉の向こうは静かになる。再び現れた歯医者に「おいで」と手を伸ばされ、女の子は大急ぎで逃げ出す。

      「強姦」「婦女暴行」が匂わされる恐怖の中で、歯医者が巻き毛の少女に何をしたのかは、自分でよく考えてごらんなさいと先生は言い、恐ろしい話の結末はうやむやにされてしまう。

      戦争が終わり、ナチスの恐怖は過去のものになった。しかし、大人になった「私」は、今でも、子どもへの性犯罪を扱ったニュースを耳にすると、まず先生が露骨な表現で描写した歯医者の姿を犯人像として浮かべてしまい、そんな自分を責める。不吉な連想、はかりしれない影響、解放されることのない毒された思考は、理論的な正義と平和への思いを獲得した後も、「私」の人生を蝕んでいるのだ。

      筆者は、あとがきで記す。

      「まもなく時代の証人はいなくなるでしょう。あの時代の恥ずべき行為が忘れ去られることがないよう。私はこの書を世に送り出します。人間を踏みにじる政治は、もう二度と行われてはなりません。それはドイツでも、他のどんな国でも同じです。」

       騙され欺かれた子ども時代、その負の歴史を、描いた先人の気概に応える読者であらねばならぬと思う。それが、今、この時代に居合わせている我々の責任ではないか。我々は、自分の価値観を信じている。平和は尊い。戦争はしてはならない。しかし、その真実の意味と実現へのプロセスを自分の言葉で考えることを怠れば、それは時代の価値観でしかなく、普通の人々が正しいと思い込んで戦争に加担した、あの頃の状況と全く変わりはないのである。人間の弱さと強さを見据え、再び全体主義の狂気に飲み込まれないよう、世の中のあり方を自分の言葉で考えなければならない。この本はそんな思いを突きつけてくる。

                                『子どもの本棚』201302

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