スポンサーサイト

2017.07.08 Saturday
0

    一定期間更新がないため広告を表示しています

    category:- | by:スポンサードリンク | - | -

    石の神

    2015.02.21 Saturday 00:40
    0
              
              田中彩子・作 一色・画 福音館書店 2014




      「二人の少年がそこにいるという魅力」

      二人の少年、その言葉はその響きだけで読む者に不思議な可能性と、ときめきを感じさせてくれる。
      『ウロボロス 警察ヲ裁クハ我ニアリ』(神崎裕也・新潮社)は、現在テレビドラマにもなっている人気漫画だ。完結していない物語である以上、作品としての評価は避けたいと思うが、二人の少年という言葉のイメージが持つ魅力を見事に図式化している。愛する人を殺した犯人を捜すため、施設で育った二人の少年が、一人は警察官に、一人はヤクザに成長する。世界の光と影、両面からでないと真相にたどり着けない警察組織。人情に心を揺らし、冴えない振りをして警察官として生きている龍崎イクオ。ヤクザの若頭として打算的に暴力的に世渡りをしていく段野竜哉。オンオフの使い分けの歪みに傷つくイクオの若さと、ずっとオン状態でなければ生きのびることのできない竜哉の孤独。表裏でありながら、二人の主人公の心が交わる瞬間に読む者は心を奪われる。同じ目的、同じ根を持つ、異なる魅力の二人。
      『石の神』を読んだとき、私は同じような感触を覚えた。
       寛次郎は、石工に憧れ大江屋に奉公に来た。新弟子が現れず、偶然の不運とはいえ、三年間も飯炊き係に甘んじている。石工になりに来たのに鑿一本持たせてもらえないのだ。そこへ、申吉と呼ばれる少年が拾われてくる。自分の名も名乗らず、自分のことを一切語らない申吉は、猿回しの子ではないかと噂がたちあらぬ差別を受けたりする。申吉は、実は物心ついた頃から、捨吉と呼ばれ、村の警護を任されながらも村で暮らすことを許されない、荒れ地に住むものたちに育てられた。血なまぐさい事件が起こったある日、知らなくてもいい、どこにいたか、何をしていたか話すなと言い含められその地を追われた。申吉と呼ばれるようになった捨吉の運の強さを示すように一年も経たぬうちに新弟子が入り、下働きを卒業する。なのに、申吉は、本気で石に向かい合っているようには思えない。
      そんな中、申吉と寛次郎は、親方から腕比べを言い渡される。申吉の彫り上げた地蔵を見て、寛次郎は、奥歯をかみしめる
      彫りの腕なら、申吉とおれとのあいだに、そこまでの差があるとは思えない。ならばこの圧倒的な敗北感は、どこからやってくるのだろう。なにが申吉にはあって、おれにはないというのか。
      しかし、親方は、この勝負を「引き分けだ」と言う。申吉の地蔵の方がと、言葉を返し、決着をつけたがる寛次郎に、親方は、「てめえの親方が信じられないというのなら、今すぐに荷物をまとめて、ここから出ていけ」と、恫喝するのだ。
       素朴な、老婆が手を合わせでもしてくれそうな地蔵を彫った寛次郎と、見るものにおぞましいとさえ思わせる、牙を剥いた神のような地蔵を彫った申吉。
       自分が腹の中に抱える、自分に憑りついた何かを、恐れながらも、鑿の先に現し始めた申吉と、触れてはならない遠くに見える原形を自分なりの形にしたいと目を凝らし、腕を伸ばし続ける寛次郎。
       二人の石工としての在り方に勝敗はないと言い切ってくれた親方こそ石の神だと私は思いたい。
       コントロール不能なものを抱えるがゆえに異形のものとして心を閉ざし我が道を歩まなければならない申吉の若い痛みと、見えないものが見えるゆえに、形を追うために精進すること、強くあることを義務付けられた寛次郎の孤独。同じ目的、同じ根を持つ、異なる魅力の二人の姿は、どんな物語の起伏よりドラマチックに読む者の心を惹きつけてくれる。

                          (子どもの本棚 2015.03月号)

       

      category: | by:天晴くん☆comments(0)trackbacks(0)

      スポンサーサイト

      2017.07.08 Saturday 00:40
      0
        category:- | by:スポンサードリンク | - | -
        Comment








           
        Trackback
        この記事のトラックバックURL

        PR
        Calender
          12345
        6789101112
        13141516171819
        20212223242526
        2728293031  
        << August 2017 >>
        Selected entry
        Category
        Archives
        Profile
        Search
        Others
        Mobile
        qrcode
        Powered
        無料ブログ作成サービス JUGEM